高校1年生のときの話だ。
同じクラスに、半端なく口が臭い友人がいた。

例えるなら、茹で卵を半年くらい口の中で熟成させて、それを液状化したようなニオイ。

または、発酵させた歯クソを電子レンジにかけて生温かくしたようなニオイ。

とにかく、それくらい臭い。



僕と彼は、高校の入学式で出会った。

お互いに元陸上部だったこともあり、すぐに意気投合。高校初日に友だちができたことがすごく嬉しかった。

入学の式典やクラスでの自己紹介も終わり、帰宅する時間に。
彼とは帰る方向も同じだったので、当然いっしょに帰ることになる。

そこでだ。隣り合って歩いていると、何やら異臭がするのだ。

近くに工場があるわけでもない。車の排気ガスでもない。となると、


こいつか

こいつ、半端なく口が臭い


僕は意識してか意識せずか分からないが、とっさに距離を取った。そうでもしないと、殺られると思ったからだ。

「確実にこいつは、俺の命を狙いにきている」
そう思った。

入学早々、こんな事態になるとは思わなかった。

原因は分からない。
命を狙われるようなことをした覚えはないし、恨みを買うような人間でもないはずだ。

でもそんなことには関係なく、彼の猛襲(臭)は僕の生命を脅かす。

なにより一番の驚きは、彼がマスクをしていたことだ。
 
布で口を覆っているのに、このニオイ。

一体全体、その呪符(マスク)を剥がしたらどれほどのニオイが拡散されるのか…?

彼はもしかしたらテロを起こそうとしているのではないか…?



息も絶え絶え、なんとか帰路についた。

おそらく、このことを知っているのは僕だけ。
被害者をひとりでも減らすことに、高校生活のすべてを捧げようと決意した。

僕の、波乱の学生生活が幕を開けた。